2017年06月14日

とって教えてな

月々のアパートの家賃もこれから先の進学を考えて、保険金には手を付けさせないように、尊は父と交渉してくれていた。
「尊兄ちゃんが、お金はお父さんが出してくれるから、心配いらないって言ったんだけど……。」
「あんなでも一応親だからな、まともな時はその位はしてもらっても避孕 藥 副作用いいと思うぞ。親に貰った物は、いつか琉生に子供が出来たらその子に返せばいいんだから。」
困った琉生は、慌てて話を逸らせた。
「隼人兄ちゃんだって、本当は毎日来るのは大変でしょ?家とは方向が逆だもんね。」
「別に。一人で飯を食ってもつまんないからな。」
「ここに越してきて大分経つから、心配しなくていいよ?一人暮らしも慣れたし。」
「ば~か。余計な気を回すな。琉生の飯はうまいし、晩御飯はここで食うって決めたんだ。」
隼人は空になった丼を持つと、立ちあがった。
「あれ……?隼人兄ちゃんが、片づけするの?いいよ。ぼく、後でやるから。」
「兄貴がうるさいんだよ。琉生にばっかり家事をやらせるなって、電話してくるんだ。琉生が絵を描く時間を削らせるなって、うぜ~の。ドラマに出てくる姑みたいだ。」
「あはは……」
ふと、隼人は琉生の絵に目をやった。
壁際のイーゼルに立てかけられた絵には、覆いが掛けられていた。
「琉生。この絵って、どこかの美術展に出すやつ?」
「そうだよ。顧問が好きなものをいっぱい描いて、多くの人に見て貰いなさいって言ってくれたんだ。本当は、デッサンとか基礎をもっとやらないといけないけど、学校の勉強もおろ避孕方法そかにしてたら大学通らないから、どっちも頑張るんだ。」
「両方頑張れって、先生がそう言ったのか?」
「尊兄ちゃんが。偏差値は大事だって。」
「そうか。俺は勉強はからきしだから、そういう事は兄貴に頼れ。他に独り暮らしで困ってる事は無いか?」
「何も無いよ。お昼は給食だし、朝ご飯は簡単だし。好きな絵を描いてても誰も何も言わないし、毎日すごく幸せ。」
「そうか、それなら良かった。」
琉生を見つめる隼人の視線は優しい。
毎日、琉生のアパートを訪ねて時間を過ごすのが、隼人にも心地よい時間になっていた。
誰かが自分を待っている家に帰るのは、それだけで明るい気持ちになる。
実家に帰れば、以前よりも寡黙になった父は書斎に殆ど引きこもったままだ。
話をしようにも、扉は固く閉ざされていて、隼人はいつしか父との会話を諦めた。
「琉生、親父の事なんだけどな……」
琉生の顔が、わかりやすく硬直する。
「う……ん。何か変わった事あった?」
「何も無い……というよりも、以前にもまして部屋から出て来なくなったんだ。仕事はしているようだから大丈夫だとは思うけど、一応は琉生も気にしておいた方が良いと思ってな。このアパートの事はいけど、念の為に部屋の鍵は掛けておけよ?今日も開いてたぞ。」


Posted by いてこてんと横 at 12:42│Comments(0)
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